
裁判官の判断は、その個人的な視野・価値観の外にはでない(勝訴判決が判例雑誌に掲載される前に、逆転判決が出て狼狽えたこと):ゴルフ会員契約の解除の事例
・予約不要のプレーシステム及び特別ゲスト枠の制限を内容としていたゴルフ会員契約において、これらを取り止めたことはプレーの仕組みを基本的に変更するもので債務不履行に当たるとされた事例
札幌地方裁判所平成10年1月29日判決
「判例タイムズ」1014号218頁
・ゴルフ場使用について、特別ゲスト枠の廃止及び予約制度の導入はゴルフ会員契約において保証されるべき本質的中核的な価値を有するものとはいえないとして、特別ゲスト枠の廃止及び予約制度の導入がされてことを理由としてゴルフ会員契約の解除をすることは許されないとされた事例
札幌高等裁判所平成11年2月9日判決
「判例時報」1693号82頁
同一事件の第一審、第二審判決です。
本件は、ゴルフ会員契約に関し、会員の承諾なしに、当初会員が有していた特別ゲスト枠を廃止し、当初存在しなかった予約制度を導入したことが債務不履行に当たるか否かが問題となった事案で、第一、二審で判断が分かれた裁判例です。
第一審は、債務不履行に当たるとして会員よりの解除を認めましたが、第二審は、解除は許されないとしました。
第一、二審いずれの判決書も、証拠に基づいた認定・判断としてその理由が記載されています。しかし、結論が決まれば、後付けで証拠の優劣を決め、理路整然と並べることも、技術的に可能です。
本件については、一方当事者から依頼された弁護士の立場からではありますが、結論が相反したのは、予約不要のプレーシステム及び特別ゲスト枠の制限をゴルフ会員契約におけるプレーの基本的な仕組みとの考えを持つ第一審裁判官と、ゴルフ会員契約において保証されるべき本質的中核的な価値を有するものとはいえないとの考えを持つ第二審裁判官らの、ゴルフプレーに対する価値観の違いがそのまま反映したとしかとした思われません。
私は、今でも、第一審の若手裁判官はゴルフを趣味にしていたが、第二審の裁判官らはゴルフには全く関心がなかったのではないかと邪推しています。
いずれにしても、経験則いっても、裁判官の見える範囲・識見や経験によってその具体的内容は様々であり、その意味で、経験則は裁判官の数だけあると想定した方がよいようです。
6 前田尚一法律事務所の取組
私は、依頼者にとっての「勝利」とは何かにこだわっています。
また、紛争解決のモデルは「訴訟」であり、実際に「訴訟」を行うスキルとマインドが、弁護士に必要な基本的な能力だと考えています。
これまで、さまざまな訴訟に取り組みながら、中小企業の「企業法務」全般に注力し、常に30社以上の企業を顧問弁護士として直接担当し、30年以上の弁護士としての経験と実績を積んできました。
この経験と実績を活かし、依頼先企業の実態や事情に加えて、企業独自の志向や経営者のキャラクターやパーソナリティも考慮し、紛争の予防と解決に取り組んでいます。
ご興味があれば、お気軽にご相談ください。
[ご参考]
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- 1 企業間紛争について民事訴訟の活用場面:特に中小企業の場合を念頭に
- 2 企業間紛争を民事訴訟で解決するメリットとデメリット
- 3 民事訴訟で「勝つ」ために
- 4 当事務所の取扱事例からエピソードをいくつか
- (1)事案の特殊性を明らかにし、裁判実務上の取扱いの例外として扱われるべき事例であることを説得すること:オーナー社長の死亡に対する対処の事例
- (2)躊躇する裁判官の背中を押す:土地区画整理事業の事例
- (3)裁判官の判断は、その個人的な視野・価値観の外にはでない(勝訴判決が判例雑誌に掲載される前に、逆転判決が出て狼狽えたこと):ゴルフ会員契約の解除の事例
- (4)裁判官が判決の理由を書きやすい主張を構成する:会社の支配権の確保の事例
- (5)事件ごとにそのたび、そのたび繰り返さなければならない:オーナー社長の死亡に対する対処、再び
- (6)裁判例の相場どおりにせずに、認容額を増額させたり[原告事案]、割合を下げて支払額を減額する[被告事案]:名誉毀損の事例、商品取引の事例、官製談合の事例
- 5 弁護士の選び方
- 6 前田尚一法律事務所の取組









