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契約書を作成する意味 | 札幌で企業法務に強い顧問弁護士 法律相談は【前田尚一法律事務所】へ

 

 会社の経営者、管理者であれば、事業を営む以上、契約書の作成が重要であることは理解しています。

 ところが、つい契約書を作成しないまま事業を開始したり、契約書の作成に当たっては、「雛形」を入手してほとんどそのままで利用し、その場を切り抜けるというのが実情です。

 中小企業の経営者の方々は、契約書の作成をどのように活用しなければならないでしょうか。

 

契約書の作成についての“教科書”的な説明

 社長から、会社の契約関係を担当しろと命じられ、真面目な担当者は、専門書を買って読んでみると、「契約」とは「相対立する複数の意思表示の合致によって成立する法律行為」なんて書いてあって面くらい、口約束だけでも契約は成立するのが原則などと書いてあるので、そうなんだなどと思っているのが実情です。

 しかし、あまり難しいことは考えず、とりあえずは、「契約」は〝法律でしばられる約束〟という程度に理解しておけば十分です。

 むしろ、口約束だけでもよいというのに、あえて契約書を作成するのはなぜかを考えて見ないといけません。

 

 専門書には、契約書を作成するのは、一つは、裁判となる場合などを想定して証拠を残すとため、もう一つは法律で決められている以上に有利な特約を結ぶことができるためなどと書いてあるのが通例です。

 

 そして、有利な特約といえば、分割で返済する場合の金銭貸借契約を貸主の立場で締結する際、分割の支払いを2回以上怠れば、残額を一括して支払わなければならないとの条項(「期限の利益喪失条項」)とか、支払を遅れたり、一括して支払わなければならないときは、高い違約金(分かりやすくいうと、罰金)を払わなければならないなどといった条項(「損害賠償額の予定条項」・「違約金条項」)を入れるのがよいなどと説明されているでしょう。
確かに、そうすると、ある限定された場面では有効な場合もあります。

 

 しかし、お金を分割して返す約束で借りたのに、2回分程度を溜め込むんでしまうようなトラブルを起こすような人が、残金を一括で返すことなどできるのでしょうか。まして、高い違約金まで支払うことができるはずもない、というのが実際です。

 また、家主の立場で建物賃貸借契約を結ぶ場合、賃料の支払いを1回でも怠れば、賃貸借契約が直ちに解除され、建物を返還しなければならないという条項を定めても、賃借人に一方的に不利益なので、借地借家法という法律で無効とされてしまいます(もっとも、その契約条項が文字どおりに法律上の効果を発揮し得ないことを納得した上で、敢えて契約書に盛り込むことはあります。)。

 

 つまり、中小企業間や会社と個人の場合、有利な特約を結ぶといっても、限度があり、その効力を期待しても現実的でない場合が大半です。

 

契約書を作成する現実的・実践的な意味

 特に中小企業の場合、契約書作成の意味は、決して忘れてはいけないことですので、頭に刻み込んでおいてください。

 契約書を作成する現実的な理由は、とにかく事実関係と約束する内容をはっきりと確認することにあります。

 約束した内容を心の中にきちんと刻み込んでもらい、もし約束を破れば大変なことになると意識してもらい、約束を守らせる心理的拘束をかけること、そして、不幸にもトラブルとなっても、そんなこと忘れたとか、そんなこと言った覚えはないなどと弁解させないためです。

 

 このあたりを実現することはなかなか難しく、素人が専門的な本を読んで勉強しても、「生兵法はケガの元」ということになりかねません。

 契約書書式集には載っていないような場面もたくさんありますし、本には書いていないノウハウもあります。

 

  1.  契約書を作成する場合は、絵に描いた餅とならないように、きちんと専門家に相談して、実践的な内容にしなければなりません。
  2.  もっとも、弁護士等の専門家も、相談される方の実情を知らないまま限られた時間でアドバイスをするということになれば、一般的な説明に終始せざるを得ません。先に「契約書についての“教科書”的な説明」で述べたような内容の説明しかできないというのが実情でしょう。

 作成する契約書に盛り込むべき内容を、相談者の実情、契約する取引の相談者にとっての意味、契約相手との力関係をきちんと把握し、また、さらに相談者ご本人が気が付いていない点も探りながら、確定してこそ、専門家の真の役割が全うされることになります。

 なお、「公正証書」については、別稿「公正証書の作り方 !」を参考にしてください。

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