札幌で企業法務に強い顧問弁護士 法律相談は【前田尚一法律事務所】へ

Close

よくある質問

下請事業者いじめに対抗:民事訴訟の活用法[前田尚一法律事務所(札幌)]

下請事業者いじめに対抗

1 下請事業者いじめの行為に対する民事訴訟の活用

 親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為については、独占禁止法による優越的地位の濫用に対する規制・下請法による規制によって公正取引委員会・中小企業庁による行政規制の対象となります。

 公正取引委員会ホームページでは、次のように大手スーパーと納入業者の例で説明されています(「私たちの暮らしと独占禁止法の関わり」)。

 大手スーパーが納入業者に対して、押し付け販売、返品、従業員派遣や協賛金負担などを強いる不当な行為は、「優越的地位の濫用」にあたり、不公正な取引方法の一つとして禁止されています。下請取引において、このような問題が起きる場合が多く、独占禁止法の補完法の「下請法」できめ細かに不当な行為が制限されています。「下請法」は、下請代金の支払遅延や減額、不当な受領拒否や返品など、「下請けいじめ」となる行為を禁止し、公正取引委員会が違反行為に対して迅速に取り締まり、下請事業者を守っているのです

 しかし、公正取引委員会による規制は行政措置ですので、被害を受けた下請事業者としては、局面によって、私法的救済手段である民事訴訟を活用することも考えられます。

 令和3年3月、公正取引委員会と中小企業庁が連名で、下請代金をできる限り現金により支払うこと、手形による場合はそのサイトを60日以内とすることなどを要請し、経済界から大きな反響があったところです。

 「○○○、ESG経営を念頭に 下請法に基づき現金払いに」(農村ニュース2022/10/11)といった報道もありますが、「下請法違反最多8671件 コスト増、買いたたききなど 昨年度」(日本経済新聞2023年5月31日朝刊)などと報道されている状況が現実です。

 

2 齊川商店対セコマら訴訟 「コメ返品7億円賠償命令 セコマグループに 茨城の業者控訴へ=北海道」

《コメ返品7億円賠償命令 セコマグループに 茨城の業者控訴へ=北海道》


 読売新聞2018年4月27日朝刊の記事の見出しです。
 本件は、米の返品合意が無効であるとして、返品された米の代金相当額及び返金額の支払を求めた事案において、下請法違反により直ちに同合意の私法上の効力が否定されるものではないとしつつ、優劣的地位の濫用の要件を引用して、民法90条の公序良俗に反する無効なものと判断した事例です(「斎川商店対セコマら訴訟」)。

 北海道最大大手のコンビニエンスストアチェーンが米卸売業者に対し製造委託契約の商品である米を返品したことについて、米卸売業者がチェーンを構成する(株)セコマ[本部]、(株)セイコーフレッシュフーズ[仕入れ・販売]、(株)セイコーマート[承継人]らに対し、不法行為などに基づき、返品分に対する未払代金分と既払の代金返金分の相当額合計約19億円等の支払を求めた事案です。

 裁判所は、優越的地位を濫用してされた公序良俗に反する無効な合意に基づく返品であり、不法行為等に該当するとして、総額約7億円を認める限度で本訴請求を認容しました([第一審]札幌地方裁判所平成30年4月26日判決、[控訴審]札幌高等裁判所平成31年3月7日判決)。

 なお、同一当事者間の米取引に関して、米卸売業者が、販促協力金及び運送費の支払を強制されたと主張して、不法行為などに基づき、損害賠償等合計11億円余り及び遅延損害金等の支払を請求しました。
 しかし、裁判所は、有効な合意に基づく支払であるなどとして棄却しました([第一審]札幌地方裁判所平成31年3月14日判決、[控訴審]札幌高等裁判所平成31年3月7日判決)。

  ちなみに、その後、この米卸売業者は破産手続開始の決定がされています。下請業者の対抗策が大きな流れと咬み合わなかったのかもしれません。

 

参考[独占禁止法上の優越的地位の濫用規制・下請法]

1 下請法による規制

 下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正にさせるとともに、下請事業者の利益を保護することを目的とするものです。下請法は、優越的地位の濫用行為を禁止する独占禁止法の補完法であり、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律です。

 適用対象となる下請取引の範囲を、①取引の内容と、②資本金区分の両面から定めており、規制対象となる取引の発注者(「親事業者」)を資本金区分により「優越的地位にある」ものとして取り扱い、下請取引に係る親事業者の不当な行為を、より迅速かつ効果的に規制することを狙いとしています。

  取引の対象となる取引の内容は、「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」ですが、建設業法に規定される建設業を営む者が業として請け負う建設工事は、下請法の対象となりません。建設工事の下請負については、建設業法において下請法と類似の規定が置かれています。

 下請法では、次のとおり、親事業者の義務と親事業者の禁止事項を定めています。

  a 親事業者の義務
   ① 書面の交付義務
   ② 支払期日を定める義務
   ③ 書類の作成・保存義務
   ④ 遅延利息の支払義務

  b 親事業者の禁止事項
   ① 受領拒否
   ② 下請代金の支払遅延
   ③ 下請代金の減額
   ④ 返品
   ⑤ 買いたたき
   ⑥ 購入・利用強制
   ⑦ 報復措置
   ⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済
   ⑨ 割引困難な手形の交付
   ⑩ 不当な経済上の利益の提出要請
   ⑪ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

 

2 独占禁止法による優越的地位の濫用についての規制

  優越的地位の濫用は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法及び企業結合を規制する独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)において、不公正な取引方法の行為類型の一類型として禁止されています。

 下請法の規制対象とならない場合であっても、優越的地位の濫用行為が

あり、独占禁止法が適用されることがあります。

弁護士の選び方

 企業間紛争を解決するに当たって、争いばかりを好むことが適切とはいえないとしても、紛争をうやむやにせずに徹底して闘わなければならないことが多々あります。
 しかし、そのような状況でも、「早期解決」という言葉に飛びつき、拙速に妥協してしまい、問題を完全に解決せずに将来のトラブルの種を残すことはよくあります。
 経営者にとって重要なことは、依頼する弁護士からの説明を通じて、まず自身の状況を客観的に理解し、適切な解決策を追求することです。
 そして、経営者が徹底して闘うと決意した場合に、弁護士が「和を以て貴しとなす」という信念のもと、「無難にまとめよう」とする姿勢を取ると、相手に一方的に押され、立場が弱くなってしまうこととなりかねません。
 最近では、「弁護士大量増員時代」の到来したためか、弁護士側も「紛争を予防」することや「迅速な解決」を強調して宣伝するようになりました。
 しかし、処理のスピードを重視することが弁護士の技術不足を隠蔽するための手段や早期の報酬確保のための方策であるのなら、本末転倒であるといわなければなりません。
 こうした点を考慮する場合、信頼できる人物を紹介してもらうのが最も良い方法ですが、いずれにしても、実際に会ってコミュニケーションをとれる相手であることが重要です。つまり、「相性」が重要なポイントとなります。
 もちろん、実力不足の弁護士は避けるべきですが、とにかく会ってみないと判断できません。ピンと来なければ依頼しなければいいだけのことです。

前田尚一当事務所の取組

 私は、依頼者にとっての「勝利」とは何かにこだわっています。
 また、紛争解決のモデルは「訴訟」であり、実際に「訴訟」を行うスキルとマインドが、弁護士に必要な基本的な能力だと考えています。
 これまで、さまざまな訴訟に取り組みながら、中小企業の「企業法務」全般に注力し、常に30社以上の企業を顧問弁護士として直接担当し、30年以上の弁護士としての経験と実績を積んできました。
 この経験と実績を活かし、依頼先企業の実態や事情に加えて、企業独自の志向や経営者のキャラクターやパーソナリティも考慮し、紛争の予防と解決に取り組んでいます。
 ご興味があれば、お気軽にご相談ください。

前田尚一法律事務所西11丁目駅2番出口徒歩45秒

アクセスマップ