もともと,医療広告(病院広告)は禁止されていましたが,平成19年改正によって,一般消費者の適切な医療機関の選択にしするような客観性・正確性を確保しうる事項項については,広告が解禁されました。
もっとも,病院として,あるいは医師側として訴求したい事項は,法律の目的とズレがあることもしばしばあるところです。
ご紹介するのは,雑誌で医師の特集を組む場合に,広告規制に違反しないようにするためどのような点に留意しなければならないかを説明する素材として用意した資料です。
ポイントは,病院が独自にに広告をする場合も同一ですので,参考にしてください。
当事務所では,医療広告・病院広告の審査チェックについてのご相談を受けておりますので,ぜひご利用ください。
令和元年7月10日
弁 護 士 前 田 尚 一
札幌市中央区南1条西11丁目1番地
コンチネンタルビル9階
TEL011-261-6234 FAX261-6241
本説明書は,「●●●●」(以下「本誌」といいます。)に掲載する医療広告を執筆する際の,最低限の留意事項をまとめたものです。
美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加などを踏まえ,医療機関のウェブサイトに対する法規制が必要であるとの観点から,医療に関する広告(医療広告)規制の見直しが行われ,「医療法」等が改正されました。
ざっくり言うと,改正の趣旨が上記のとおりですので,雑誌である本誌の医療広告執筆については,医療広告規制の枠組みは,従前のそれと基本的には同様ということとなります。
ちなみに,官公庁を意識した業務を上手く進めるコツは,「言われたとおりにやる」ということです(もちろん,書いてあるとおりにやれば,それで足りるという意味ではありません。)。
これを踏まえ,まずは,本説明書を3分間で斜め読みしてください。
なお,今回のご依頼に対応するため集めた資料は山のようにありますので,知りたい内容をお伝えいただければ,適宜有用なものを提供できるかと思います。
また,厚生労働省のWebのなかにある「医療法における病院等の広告規制について」のページが充実していますので,これらを活用ください。
1 資料「“医療広告・広報”-2019年現在の総まとめ」は熟読する。
* Q&A(背景黄色) ⇒ [Q&A]
【具体例】 ⇒ [医療広告ガイドライン]
2 [Q&A]に一度は目を通す。
*記載された頁は,[医療広告ガイドライン]の該当箇所
3 [医療広告ガイドライン]を参考にする。
4 厚生労働省のWebの「医療法における病院等の広告規制について」から資料を探して確認する。
〇 アンチエイジング
〇 病人が回復して元気になる姿のイラスト
〇 新聞・雑誌で紹介
〇 安全、無痛
・「絶対安全な手術です!」×
・無痛分娩を実施〇
・無痛治療院×
〇 最高級表現・比較表現
〇 専門家の説話、芸能人・著名人の来院・治療
〇 他の治療・手術よりベター
〇 患者の体験談
〇 ビフォ・アフター写真
〇 安さの強調
〇 診療科名・専門外来
・「○○外来」×
〇 専門医・学会
・単に「○○専門医」× ⇒ ・・・
・学会の役員△
・単に会員×
〇「数」表現
・外来患者の数 = 暦月単位で併記…
・医師の手術数× ⇒ 院の手術数
・・・・・・・・・・・・・・
(1)広告が可能とされていない事項の広告(法6条の5第3項)
(2)虚偽広告(法6条の5第1項)
(3)比較優良広告(法6条の5第2項1号)
(4)誇大広告(法6条の5第2項2号)
(5)患者等の主観に基づく,治療等の内容又は効果に関する体験談の広告(法6条の5第4号,省令1条1号)
(6)治療等の内容・効果について,患者等を誤認させるおそれがある治療等の前・後の写真等の広告(法6条の5第4号,省令1条2号)
(7)公序良俗に反する内容の広告(法6条の5第2項3号)
(8)その他
ア 品位を損ねる内容の広告
イ 他法令又は他法令に関する広告ガイドラインで禁止される内容の広告
(法6条の5第3項,広告告示)
(法6条の5第3項,政令等)
(法6条の5第3項,省令1条の9の2)
*ウェブサイト等
① 誘引性:患者の受診等を誘引する意図がある
② 特定性:医業の提供者名又は病院,診療所の名称が特定可能である
③ 認知性:一般人が認知できる
医療法を改正し,医療機関のウェブサイト等についても,虚偽・小代等の不適切な表示を禁止し,中止・是正命令及び罰則を科すことができるよう措置する。ただし,患者が知りたい情報(自由診療等)が得られなくなるとの懸念等を踏まえ,「患者等が自ら求めて入手するウエブサイトなど」について,広告可能事項の限定を解除できる場合を設ける。
〇「医療法」(法律)[法]
〇「医療法施行令」(政令)[政令]
〇「医療法施行規則」(厚生労働省令)[省令]
〇「医業,歯科医業若しくは助産婦の業務又は病院,診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項」(厚生労働省告示)[広告告示]
〇「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」[医療広告ガイドライン]
〇「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」[Q&A]
〇 医療品医療機器等法(旧・薬事法)(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
* 承認前の医薬品・医療機器の名称、効能・効果、性能などについて広告することを禁止
〇 健康増進法
〇 景表法(不当景品類及び不当表示防止法)
〇 不正競争防止法
医療広告については,患者等の利用者保護の観点から,
① 虚偽広告,比較優良広告,虚偽広告等「禁止される広告」の内容を明らかにし,原則として広告禁止とし,(→(3)禁止される広告),
② 患者等の治療選択等に資する情報について,限定した事項の広告を可能とするが,この事項以外は,広告禁止とする【限定列挙規制】(法6条の5第3項)一方(→「(1)広告可能な事項」),
患者等が自ら求めて入手する情報は,適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考えから,
③ ウェブサイト等の広告について,一定要件を満たした場合に,②の広告可能事項の限定を解除し,他の事項を広告できるとされています【限定列挙規制の例外】(省令1条の9の2)(→(2)広告可能事項の限定解除」)。
何事にも,一般論と個別論,抽象論と具体論があり,実務の現場では,一般論・抽象論をわきまえた上で,如何に個別・具体的に対応するかが勝負です。
④ ①ないし③のような構造になってはおりますが,法自体で定められた事項,要件といったものは,抽象的であり,具体的内容を明らかにするため,政令,省令,広告告示,医療広告ガイドライン,Q&Aが,制定・策定等されています。
広告現場では,こちらこそが取り組む対象であることはいうまでもありません。
医療広告は,患者の治療選択等に関する情報として,法・広告告示により広告可能とされている事項を除いては,原則,広告禁止です。
条文を適宜要約して項目を列挙すると、次のとおり(限定列挙)です。
それぞれについて,法の規定は抽象的であり,現場では,具体化が必要となります。
特に,◎を付したものは,要注意です。
その内容は,政令,省令,広告告示,医療広告ガイドライン,Q&Aで明らかにされていますが,なかなか時間が許さないと思います。
とりあえず,少なくとも,資料『“医療広告・広報”-2019年現在の総まとめ』の「広告可能な事項について」は,必ず目を通してください(なお,同資料は上手くまとまっておりますので,この事項に限らず,執筆始めに全てをさっと通読しておくことをお勧めします。)。なお,資料中,背景が黄色の部分のうち,[具体例]は,[医療広告ガイドライン]の引用,「Q1-7」などの記載から始まる部分は,[Q&A]の引用です。当該部分だけで不明の場合は,それぞれにあたってみてください。
もっとも,[医療広告ガイドライン]はそこそこ大部であり,まずは,[Q&A]の質問部分だけを流して読んで,留意事項として頭に刷り込んでおき,気になる場面に遭遇するたびに,あたってみるというのが,よいかもしれません。
ア 医師・歯科医師である旨(法6条の5第3項1号)
◎イ 診療科名(2号,政令)
ウ 病院・診療所の名称、電話番号,所在場所を表示する事項,病院・診療所の管理者の氏名(3号)
エ 診療日・診療時間,予約による診療の実施の有無(4号)
◎オ 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院・診療所,医師・歯科医師である場合には、その旨(5号)
カ 地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨(6号)
◎キ 入院設備の有無、病床の種別ごとの数、医師等の従業者の員数その他の施設、設備,従業者に関する事項(7号)
◎ク 診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項(8号)
ケ 患者・家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項(9号)
コ 紹介をすることができる他の病院・診療所その他の保健医療サービス・福祉サービスを提供する者の名称、施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の連携に関する事項(10号)
サ 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、書面の交付その他の医療に関する情報の提供に関する事項(11号)
◎シ 提供される医療の内容に関する事項(12号,広告告示2条)
◎ス 平均的な入院日数・外来患者数・入院患者数その他の医療の提供の結果に関する事項(13号,広告告示3条)
セ その他前各号に掲げる事項に準ずるもの(14号,広告告示4条)
法・広告告示により広告が可能とされた事項以外は,広告してはならないとされていますが,患者等が自ら求めて入手する情報については,適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考え方から,規定の要件を満たした場合,そうした広告可能事項の限定を解除し,他の事項を広告することができる,とするものです。
これは,ウェブサイト等の広告を対象とするものであるので,本誌で掲載する広告につき,今回は,関連を持たないと思われます(ただし,広告規制限定解除されると表現できるとされる例が,本誌に掲載する広告できない例ということで,反面教師的に参考になります。)。
(1),(2)以外は広告不可であることに加え,(1),(2)の事項であっても,次の内容の広告は不可
ア 虚偽広告(法6条の5第1項)
イ 比較優良広告(法6条の5第2項1号)
ウ 誇大広告(法6条の5第2項2号)
オ 公序良俗に反する内容の広告(法6条の5第2項3号)
カ 患者等の主観に基づく,治療等の内容又は効果に関する体験談の広告(法6条の5第2項4号,省令1条の9第1号)
キ 治療等の内容又は効果について,患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告(法6条の5第2項4号,省令1条の9第2号)
ク その他
(ア)品位を損ねる内容の広告
(イ)他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告:医療品医療機器等法(旧・薬事法),健康増進法,景表法,不正競争防止法
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